愛と優しさと慈しみを心に描く
このカテゴリーページでは、平井堅『楽園』V6『ありがとうのうた』嵐『トビラ』などの音楽制作に参加してきた作詞家 Makoto ATOZIが基本的な歌詞の書き方をあなたにお伝えします。
今回は#1 ー愛と優しさと慈しみを心に描くー
一番の基本でもある、歌を書くときの心構えについてお話しします。
作詞の方法がよくわからないという方は、これから連載で歌詞の書き方をお話ししますので、参考にしてみてください。
このカテゴリーブログの内容をお読みになって、Makoto ATOZIの作詞法に興味があるという方は、
ぜひ、ソングライティングセラピー作詞教室にご入会ください。
あなたは歌で何を伝えようとしているのか
世の中には多くの作詞教本があり、作詞のテクニックについて述べられています。
たとえば、連想ゲームのように言葉を広げ、語彙力を高め、表現力豊かに書きましょうというお話。
たとえば、譜面通りに言葉を紡ぎ、様式美を守りましょうというお話。
どれも正しいことではあります。
それでも、よく教則本などで書かれている連想ゲームに関して
今はぼくは一切行わず、独自の執筆法で新しい表現が生まれるように挑んでいます。
一時期、そのような手法も良いかもと感じたことがありましたが、
25年間歌を書いてきた結果として、この方法ー連想ゲームーで名曲が生まれることはありませんでした。
そのようなロジックで書いた歌がリリースされたことは、ぼくの場合はありませんでした。
このページ、歌の書き方#1で伝えたいのは
『作詞は言葉の組み合わせの妙だけではない』
『上手く言うことが作詞なのではない』ということ。
世の中では作詞家のことを言葉の魔術師と呼ぶこともあります。
とかく新しい表現方法、隠喩、暗喩、組み合わせの妙に目が行きがちな部分はありますが、それは捉え方を完全に間違えています。
人々は歌のどこを聴いているのかといえば、歌詞に連ねられた言葉だけではありません。
リスナーが歌を聴くとき、リスナーは歌の奥底に潜み宿る言霊のエナジーを聴いています。
歌に宿るエナジーによってリスナーの心は動くのです。
作詞を極めようとする際、テクニックだけではどうしても間に合わない到達点があります。
それはシンプルでありながら真理でもある、真心を正直に描いた歌だけがリスナーの心の内側へと届くという真実。
心を愛と慈しみで満たしてから歌を書く
この先、順番に歌の書き方、基本などをお教えしていきます。
ただしその前に作詞をする際に一番大切なこと。
それは本当に自分が描きたいこと、なんとしてもこの歌を世に届けたいのだと思う歌を書くということ。
それを独りよがりではなく、愛の表現として描くということ。
歌を書くとき、自分の気持ちだけを描こうとする人は多いものですが、
会話も同じく、自分の話ばかりされても聴いた人は何も感じることはできないものです。
悲しい淋しいと言われても、愛していると言われても、一番大切な相手の気持ちが描かれていなければ、
それは単なる独り言の垂れ流しのような歌になってしまいます。
共感と慈悲と永遠と
この世にあるすべての歌はラブソングです。
どのような歌も、なんらかの愛を歌っています。
毒を吐いているような歌は愛に逆らっている歌であり、それも言い換えればアンチなラブソング。
この世界にある歌のテーマは全てが愛です。
これは基本的な原則です。
歌を書き始めるときは、自分の中に愛と優しさと慈しみが満ちていることを内観します。
相手への思いやり、感謝の気持ちが充ち満ちるまでは歌は書き始めない。
世界への思いやり、感謝の気持ちが充ち満ちるまでは、歌の全体像だけを考えます。
描きたいこと、伝えたいこと、歌として集中する一点が見えてきたなら、自分のハートを愛と優しさと慈しみで満たします。
自分自身の心を抱きしめたくなるほどに、相手を抱きしめたくて仕方がなくなるほどまで慈しみが満ちてきたとき、最初の一言を書き始めます。
あなたのオリジナリティーはあなたの愛の内側にある
テクニックで歌を描こうとすれば、どうしてもどこかにあるような歌の二番煎じになってしまいます。
自分の恋愛観なんて誰かが興味があるものだろうか・・・。
その気持ちもよくわかります。
それは言葉に頼って書かれた歌の場合の基準です。
あなたが本気で愛を描こうとして、自分のハートのど真ん中を内観し、愛と優しさと慈しみで満たして、もしかしたなら泣きながら書いているかもしれませんが、そのような歌の場合は自分の恋愛観を卑下する必要はないはずです。
その時に大切なのは情熱的になってしまったり、熱くなりすぎないこと。
大切なのは自分の内側を、愛と優しさと慈しみで満たすことです。
思いやりと愛情を込めて一音一音、言葉を紡ぐ。
テクニック論者は、あなたの慈しみに満ちた歌詞を前に裸足で逃げ出すことでしょう。
本気で描ききるということ
多くの作詞家希望の方々の作品を拝見すると、うまく描きたいと言う気持ちが見えてしまいます。
心が不在なのです。メッセージがブレているのです。
そして、この人はセンスがあるな、と感じられる歌は必ず、歌の中に愛が満ちています。
歌の中に宿るエナジーが本物であれば、言葉数、メロディーへの言葉のフロー、
様々なテクニック的なことなんて全て突破するほどのエネルギーを作品は持ちます。
まずは本気で描ききるのだということを念頭に置いて歌詞を書き出してみましょう。
最初は笑われてしまうようなこともあり得るものです。
それでも、もしかしたら、一般的には笑われてしまうような作品の中に本当はキラリと輝く本物のエッセンスがあるかもしれない。
あなたが本気で愛と優しさと慈しみで自分を満たし、真心で歌を書くのなら、それは必ず誰かのハートに届くことでしょう。
今回は一番最初のレッスンということで基本中の基本。
ぼくが思う作詞の原則についてお話ししました。
それではまた次回をお楽しみに。
Makoto ATOZI