作詞講座第三章 作詞の基礎知識3つのステップ ② 作詞家の仕事の順序

決め打ちとコンペ

これはプロフェッショナルな現場の話になりますが、作詞の仕事には大きく分けてコンペによる制作、決め打ちによる制作の2種類の進め方があります。

コンペの場合は、音楽レーベルまたはプロデューサーなどが数名ー数十名、多いときは百名を超える作家に一斉に作詞を依頼して、理想に近い、または理想を超えているとされる作品が選ばれ、ブラッシュアップを重ねてリリースされることになります。
これはすでに売れているビッグアーティストの現場でよく行われている制作のスタイルです。

決め打ちの場合は、たとえばエージェントを通して、または直接プロデューサー、ディレクター、作曲家などから「今、歌詞書けますか?時間・余裕ありますか?」などと問い合わせがあり、制作内容にお互いが了承できる場合、楽曲制作がスタートします。
決め打ちですから作詞家は一人、自分のみ。
逃げ道はありません。確実に名曲にするのだという意気込みで制作に参加させていあ抱くことになります。

メロディーを身体と心にしみこませる

作品制作への参加が決まると、デモ音源、楽譜、企画書、アーティストの詳細などを受け取ります。
1曲だけの制作のときもあれば、アルバムすべてという場合もあります。

締め切りは通常で約1週間ー10日ということが多く、時と場合によっては、今日受け取って明日の夜までということもあります。
1週間後にはレコーディングの日が決まっていて、その日は変えられないということもあります。発売日が先に決まっていて逆算して制作が行われるため、売れているアーティストであればあるほどに、製作日数もタイトになることは多いものです。

デモ音源をいただいたなら、ひたすらに音源を聴きます。何十回も何百回も音源を流しっぱなしにして、完全に心身にしみこませます。
そうして、メロディーを完全に自分の中に取り込めたなら、タイトル、テーマを決めて、全体像を内観して心の中d描き出します。

集中力こそがすべて

ここでは作詞のロジックに関しては話しませんが、基本的に、歌を書く時は、ゾーンに入ることを目的において、メロディーに集中します。
外部の情報は完全に遮断し、もちろん、携帯電話なども鳴らないようにしておきます。
一にも二にもなく集中する。
そして、1コーラスから描き始め、一度、一気に書き上げます。
これは僕の通常のスタイルを話しているのであって、作家さんによって各スピードなども様々ではありますが、僕はこの書き方が一番、自分の性に合っていて、名曲が生まれやすい方法だと感じています。

ブラッシュアップは大胆に

せっかく心を込めて、全神経を集中して書き上げた作品を提出しても、別の内容でもう1作品書いてみてください、なんてことは日常茶飯事です。
1曲に対して10曲くらいは書ける余裕をもって対応します。
ブラッシュアップの際は細かな部分を直すのではなく、大胆にブラッシュアップを行います。
その方が受け取り側としても期待値を超えることが多いからです。
どんなブラッシュアップをすることができるのか。
それこそがプロの作詞家の身が持つ技術と経験でもあります。

情報解禁までは秘密事項守秘義務

基本的に制作中も制作後も、情報が解禁されるまでは、制作内容、作品に関しては一切外部に漏らすことは許されません。
守秘義務はプロの最低限の義務でもあります。
うっかりうれしさから他者に話してしまう新人さんも時々いるようですが、長く仕事を続けたいのであれば、基本的なルールは守った方がよいでしょう。

今回お話しした制作スタイルはおおまかなことだけではありますが、作詞家に市場に要求されていることは何かというならばそれは、依頼者の期待値をはるかに超えた作品を書くこと。これをこなし続けることができるならきっとあなたは求められるクリエイターとして生きていけるでしょう。

ソングライティングセラピー作詞教室はプロ養成講座ではないので、本来話さなくてもいいことではありすが、今回、作詞家の制作状況について少しお話してみました。

何かご参考になりましたらと思います。

それでは、集中していい歌を書きましょう!

Makoto ATOZI