詩 難破船
川から海へ出でて日は過ぎた
宝島を目指した船の羅針盤は動かず
太陽の下 または雨の下で
私はただ船上で水平線を眺めている
同じように水平線を眺める者
部屋から出てこない者
考えることをやめヴァイオリンを奏でる者
生命は皆 それぞれの思惑に時からはぐれている
難を破るように船は天の地に辿り着くのか
多くの地に降り立ち不思議な景色をたくさん見てきた
大型船と言われているが
なんでもありえる世界の中で船はあまりにも小さい
この小さな船よ 石を打ち砕き進め
行き先は知らずとも難破の身なれど愉快に
跳ねる飛び魚たちに虹の餌をあげよう
全ての生命が幻想に見えるとき船は確かに進みゆく
幻の海の上で幻の私が太陽に祈りを捧げる
言葉さえなくしてただ人生を思う
答えなどなくても後悔もない
幻のような世界の中で生かされて
幻のように愛を抱きしめている
それは幻ではなく確かな光だと言う心の声に
難破船の上で次の港を目指しつつ
Makoto ATOZI